SWOT分析とは
SWOT分析は、企業やプロジェクト、あるいは個人の置かれている状況を、「内部環境(Strengths/Weaknesses)」と「外部環境(Opportunities/Threats)」の2軸で整理し、戦略的な意思決定に役立てるフレームワークです。
名前は以下の4要素の頭文字をとったものです:
- Strengths(強み)
- Weaknesses(弱み)
- Opportunities(機会)
- Threats(脅威)
もともとアメリカのスタンフォード研究所で1960年代に体系化されたとされ、以来、企業戦略やマーケティング、経営コンサルティングだけでなく、個人のキャリア分析や学生の就職活動などにも応用されている非常に汎用性の高いツールです。
SWOTの4要素を詳しく解説
Strengths(強み)
自社(または対象)の内部にある、競争優位性や他社にはない資源。
- ブランド力、技術力、人的資源、コスト構造、知的財産など
- 「なぜ顧客に選ばれているのか?」を考えるのが鍵
Weaknesses(弱み)
自社の課題や制約、他社と比較して劣る点。
- 組織体制の弱さ、資金力の不足、対応スピードの遅さなど
- 「競争で不利になっている理由」を可視化
Opportunities(機会)
外部環境における成長のチャンスや変化。
- 技術革新、新興市場、法規制の緩和、顧客ニーズの変化など
- 「乗るべき波」を見つける
Threats(脅威)
外部環境にあるリスクや障害要因。
- 新規参入の増加、代替技術の登場、価格競争、規制強化など
- 「想定して備えるべきリスク」を整理する
SWOT分析の使い方ステップ
ステップ1:内部・外部の情報を収集
まずは事実ベースで現状を洗い出します。主観的な感覚でなく、データや事実をもとにすることがポイント。
ステップ2:4象限に整理する
収集した情報をS・W・O・Tの4つに分類して、マトリクス形式で整理します。
ステップ3:クロスSWOTで戦略を立案
単なる要素列挙にとどまらず、**相互の掛け合わせ(クロスSWOT)**で戦略アイデアを導きます(次章参照)。
ステップ4:アクションプランへ落とし込む
具体的な施策(例:サービス改善、新規開発、撤退判断など)へとつなげていきます。
SWOT分析はどんな場面で使うか?
SWOT分析はシンプルゆえに、ビジネスのさまざまな場面で使えます。
- 経営戦略の立案(中期計画・部門戦略など)
- 新規プロジェクトの立ち上げ
- プロダクトやブランドの棚卸し
- 競合ベンチマークの整理
- 社内ワークショップやアイデアソン
- 個人のキャリア設計・転職戦略
SWOT分析のメリットと効果
- ✅ 視野が広がる:自社視点だけでなく、外部環境にも目が届くようになる
- ✅ 課題と強みが明確化:何を伸ばすべきか、何を改善すべきかが見える
- ✅ チームの共通言語になる:構造がシンプルなので、議論のベースになりやすい
- ✅ 戦略に導線ができる:クロスSWOTでアイデアが戦略につながる
活用時の注意点と落とし穴
● 主観だけで書かれてしまう
感覚的に「これは強みだよね」と分類してしまうと、実際の競争環境とズレが生じます。客観的なデータや顧客の声を取り入れることが重要。
● SWOTを書くこと自体が目的化する
4象限を埋めて終わってしまい、アクションに繋がらないことがよくあります。次のステップ(クロスSWOT)に必ず進める意識が必要です。
● 項目の粒度がバラバラになる
「価格が安い(S)」と「経済成長(O)」では抽象度が異なるため、比較や統合が難しくなります。なるべく粒度を揃える工夫が求められます。
応用編:クロスSWOT分析とは
SWOT分析の真価は、「要素の掛け合わせ=クロスSWOT(TOWSマトリクス)」にあります。
| 戦略タイプ | 内容 |
| S × O(攻め) | 強みを活かして機会をつかむ |
| W × O(改善) | 弱みを克服して機会を活かす |
| S × T(防御) | 強みを使って脅威を回避 |
| W × T(撤退・回避) | 弱みと脅威が重なる領域から撤退を検討する |
例:S×O
- 「高い開発力 × 新しい市場ニーズ」→ 新製品の早期開発・投入
例:W×T
- 「営業体制の弱さ × 競合の値下げ攻勢」→ 顧客維持施策の緊急強化 or 価格再設計
他のフレームワークとの併用・比較
● PEST分析(政治・経済・社会・技術)
外部環境の「O」と「T」の補完に有効です。
● 3C分析(Customer/Company/Competitor)
特にSとWの整理に役立ちます。顧客視点が加わることで実効性が増します。
● 5フォース分析(業界構造)
「競争環境」の脅威を構造的に理解するには5フォースが適しています。
● バリューチェーン分析
自社の強み(S)を業務プロセスレベルで可視化できます。
有名企業のSWOT簡易事例紹介
● Apple
- S:圧倒的なブランド力とユーザー体験
- W:製造の大部分を中国に依存
- O:ウェアラブル/AI分野の成長
- T:価格競争とAndroid陣営の追い上げ
● Netflix
- S:データ駆動型のレコメンド・UX
- W:コンテンツ制作コストの増加
- O:グローバル展開の余地
- T:ディズニー+などの競合参入
● 任天堂
- S:マリオやゼルダなどの強力IP
- W:スマホゲーム分野への消極性
- O:キャラクターIPの多角展開(映画、テーマパーク)
- T:家庭用ゲーム専用機市場の縮小トレンド
SWOT分析は「自分たちの立ち位置を知ること」から戦略を生むための出発点**です。シンプルでありながら、チーム全体の理解を揃え、戦略を構築する強力な手段としてあらゆる業種・業界で活用されています。
ただし、4象限を埋めるだけでは意味がなく、そこから“何をすべきか”を導くクロス分析が本質です。さらに、他のフレームワークと連携することで分析の精度と戦略性は飛躍的に高まります。
